霧の港町

 心は、とてもあわただしい。
 日々が感情に追いつかないまま、八月が半分ほど過ぎていた。
 8日は、ナノディストロ巡業出店で霧の港町、釧路へ。元気印がとうとう動き始めた。その名もポップ・ポップ・ポップ。初企画となった今回は、TGとクラウディと共に旭川2バンド1ディストロで臨んだ釧路に於ける旭川祭り。生まれてはじめて足を踏み入れる地に、ナノで行く事が出来たのも、非常に有難くもあり、その地にとってディストロを知る開拓の機会に、ナノを選んで頂けた事も、非常に光栄なことだと思う。だからこそ、今回のディストロ出店には多大な意義と挑戦を感じていた。
 出店のお誘いを頂いた当初は、ディストロ、と一言で言われても、あまり耳馴染みなく思う方が恐らく大半の中で、果たして受け入れて頂けるか、という不安も確かにありました。その分、生半可な気持ちで臨むわけにはいかず、全力で向き合う必要があったわけです。まあ、いつだって生半可な気持ちではないですが。あらゆる不安を打ち消すのは、結局は一歩踏み出す勇気と行動しかない、ただそれだけ。
 その結果、釧路の方々の反応も良く、貪欲に音楽を求めてる思いもダイレクトに伝わったし、充実した出店となりました。旭川の面々もいるお陰もあって、私自身リラックスしてマイペースで全力で向き合うことも出来たと思うし、これからも釧路が望む限り、ナノで出来ることは何度だって応えていきたい。ライブも全バンド素晴らしかったけれど、特にあの日のTGはあの場にいなかった旭川のみんなにも観て欲しいくらい。
 彼女の音楽に対する思いが、堰を切るようにあの日あの空間に溢れていた。足を踏み入れて初めて知った釧路という地は、人、音楽、空間、すべてに音楽が好きという純粋な思いがまず先頭にあり、私自身も原点回帰する思いにもなった。終演時、釧路の元気印の仲間達から口々に発せられる、彼女が旭川へ頻繁にライブを観に行く気持ちもわかる、という言葉が、私の耳にも何度となく入ってきた。それは、旭川としても非常に有難い言葉だと思う。新たな可能性を感じる、素晴らしい企画でした。
 みんな誰かに認められたい、何にせよ、結局はそうなのかもね。
 遠くへ離れてみるのもたまには必要。東へ向かっていけば行くほど、山に囲まれて育った自分には同じ北海道なのが信じられないくらい、美しい風景ばかりがそこらじゅうに広がっていた。心が洗われるようだった。
 すこしのあいだ、ひたすらに混乱して、呼吸するのすら悲しくなるくらい、霧が立ち込めた心境の中にいた。けれど、遠く離れてみて、この身体ごと霧に包みこむことで、私はようやく元気を取り戻すことができた。深く沈みこんでも、支えとなるのは、やっぱり周りの声だったり、自然の力なのかもしれない。ありがとう。私、いつまでもこのままではいけないね。だって、これからも頑張らきゃいけない。だから、大丈夫。
 わたしの心が、安らかでありますように。