メメント・モリ

 髑髏を身に着ける人間を見かけた、
 のは偶にある事だが、そのモチーフを見る度に妙な違和感を覚える、なんとなく。一概な嫌悪感を押し付けるわけでなく、そんな気も更々ないけれど、その妙な違和感のあまり通りすがりのソレを思わず凝視し過ぎて睨んでしまう。気付けば、始めて見た時からしばしばそんな傾向。恐らく、一生そうだろうな。
 謂わば、髑髏は死の象徴、らしい。そのまま死の意味を汲み取る事も出来るし、そこから再生へと意味を為す事も出来る。或いは、何も考えなくたっていい。何にせよ象徴なんてそんなものだ。抽象的である事は、良くも悪くも罪深く、何かしらを誘発させるんだろう。ソレを格好いいとか可愛いとかロックンロールだとかいう感覚は個人的に私には到底判らないが、同じように、もちろん好みや考えなんて人それぞれにあるから、それに対して私がケチのつける事も押し付ける事も出来ない、ので、いつまでもソレを凝視しては睨む構え。そもそも、私はなぜこんなに妙な違和感を覚えるかなんて、非常に単純で、どこの馬の骨かも判らない人間だか生贄だかのサレコウベを身に纏える程、度胸も据わってない。という、明白にはただそれだけで。死とか再生とか私の場合、別にどうでもいい。死ぬ時は死ぬんだし、再生するのなら再生されるんだろうし。
 前に現代練習の時に、確かTシャツのデザインの話をしてたんだと思う、何の話題だったかはハッキリと覚えてないが、ベースのWKTK氏自ら髑髏モチーフが好き、というのを公言していた。それを聞いた瞬間、私はこれまでの氏の身なりを懸命に思い出した。よっぽどこれまで無意識に凝視し過ぎてたか、割と明白に思い出せたのには我ながら驚いたが。あぁ確かにそうだな、というか氏の一家全員そうだな、と内心思った。けれども、氏一家を見慣れている事を抜きにしても、不思議とその妙な違和感は感じなかった。寧ろ、本人達は不本意かもしれないが、まず酒が真っ先に印象付く彼らの人柄があるだけに、というか、氏だけじゃなくて私含め現代全員が酒じゃん、とか今ふと思ったけど、それは置いといて。そのせいか、氏の一家全員がそれぞれ身に着けているソレは、さっき言った死だとか再生だとかはそういう類を全く感じない、と言うより、そのシュールさを楽しんでる節さえ感じさせる、良い塩梅。さすが先生だけあって度胸が据わってんだな、とか感心したが、多分本人達は何も考えてないだろう。お洒落一家だから、髑髏そのものを悪目立ちさせないセンスもあるんだろうし。匠の技ですね。だから、氏一家は、私の中では、唯一例外で、妙な違和感を感じさせない人物かもしれない。、、まあ、さすがに凝視はするけど。
 明日から3連休。日曜はそんな氏の邸で毎年恒例の闇鍋の会。いつのまにか強制参加を命じられたので、己のサレコウベまで、アルコールで浸す連休とす。
 寒い。行けるところまで行こうと歩いてるうちに、あっという間に雪が積もった。例年なら足踏みのように段階を積むはずが今年は覆すようにあっという間に、真っ白に。根雪になってしまった。毛布に包まると、ふと私のライナスは一体何なんだろうと思った、ライナスを探りながら、今は、物に囲まれたベッドで目が覚めるまで眠るとする。