血化言葉、言葉化肉

 見たもの

 ゴダールの政治映画。面白かった。気持ちが煮え滾ってくる。

 警察汚職事件とか知的障害者とか在日朝鮮人とか暴力団とか重いと言われがちの内容を扱ってはいるものの、そこを絶妙な感じで喜劇にしている。やる事為す事いちいち派手だなあ。痛快すぎて泣き笑える。

 情けない話、宮部みゆき氏の本は大体において読もうにも集中力の無い自分にはどうもついていかず読了した試しがない。本当は読んでみたいが。だから映画で見てしまう。ドキュメンタリー手法で撮られた視点で事務的というか淡々と進めていくのが人間らしくて惹きつけられた。

 リアル過ぎる。人間の弱さも脆さも痛々しさ寂しさも。不安定な状態で温かさを知る時の感じも、自分以外の誰かを信頼して委ねる瞬間も。生きているということも。いろんな意味でこれもまた「終わりは始まり」なんかな。切ねえ。

 何度見ても全然わかんねー。が、最高。スタジオ4℃のアニメーションの独特の世界観は一度見るとなかなか抜け出すことができない麻薬性を秘めてて大変危険。派手な展開と色彩でありながら内容は意外にダークで完全にカオス。
 読んだもの

 いしいしんじ氏の本は以前から読んでみたくて、ようやく。結論を言ってしまえば、大好きです。凄く面白かった。もっと早く読めば良かったなんて久しぶりに。穏やかな雰囲気ではあるんだが紙一重で破壊と混沌が錯雑とある。急展開だとか衝撃的な展開というわけではなくて、読み進めていくと「!!」と言葉にならないような気持ちに何度もさせられた。で、あとからしみじみと感動する感じ。この物語の舞台は架空の世界のようだけども、なんとなく個人的に頭の中で物語のの風景を想像するとSamorost*1のあの雰囲気が近いように思った。それかもしくは、ジブリmeets BLACK DICEみたいな感じか。

 絲山氏の小説は全てを読んでるわけではないけど、いくつかを読んできて思うのは作品ごとに様々な感じ方をさせられるなあと。変形自在な読ませ方というか。好きな作家の一人。今作が一番好きかも。青春時代をセクト活動に身を投じ”た”男の「エスケイプ」、一方ノンセクト・ラディカル”だった”双子の弟の「アブセント」の二作。全体的に人間くさくてグダグダで軽快な展開と文体に読んでてスカッとした。

 意図せずに散りばめられたあまりにリアル過ぎることばの爆弾。痴呆老人、知的障害者、点取占い、池袋母子餓死日記、死刑囚の俳句、湯呑みに書かれた説教、統合失調症者、見世物小屋、暴走族の特攻服、誤変換、玉置宏の話芸、エロスパムメール、ラップ、相田みつを等。それは、そこらじゅうにある現代詩。まさに揺りかごから墓場まで?生(性)と死のリアリズム。すごく面白かった。特に痺れたのは痴呆老人が死期まもなくに言い放った言葉。
あんた、ちょっと来てごらん。
あんな娘のアゲハ蝶が飛びながら、
ドンドン燃えているじゃないか…

ヤバいな。正直ゴミみたいでくだらんこの日記も本気でやめたくなりました。

 姉から貸してもらった。私は動物実験は反対だ。だからその実態から目をそらさずに「知る事」を続けなくてはいけないと思う。そして出来るところから行動する。そう思い続けて今またさらに強くなった意思と。祈りと。

 何故か冷え込むと読みたくなって、これで読んだのは何回目だろう。やらかい雰囲気だが、時々ふとした拍子に良い言い回しがあったりしてグッとくる。灯火みたいに霞んで見えるが、確かに存在しそうな知らないどこかの話。吉田篤弘氏の物語はいつもどこか風を感じる。

*1:雰囲気が最高すぎるチェコflashゲーム。ここで出来る