焦燥に埋まる

 まあ別に気落ちしているわけでもないけど、かといって陽気でもない。漠然とした不安もある。こういう時に限って、些細な不平不満が蛍光ペンを引いた位に浮き彫りになって、それに対し私はバカみたいにいちいち憤慨して苛々する。くだらないもんだ。そういう状態をなんとかやり過ごそうとする一環、頭が活字を欲している。孤独な制作作業はとにかく言葉に飢えてしまう。映像じゃなくて、言葉が、欲しい。猛烈に。一途に。言葉に埋もれたい。言葉に溺れて死にたい。文字の羅列が愛しい。愛しすぎる。
 ということで、時間を見つけては本を読むことにしている。先日読了したのは、園子温「夢の中へ」(ISBN:4344007891)この話をもともと映画なのは知らずに読んでしまったのだが、文体もいい感じで読みやすかった。冴えない役者の二重夢の話。自分が眠り夢の中では自分の裏側にいる誰かが目を覚ます、自分の裏側にいる誰かが眠ると夢の中では自分が目が覚めるっていいよな、夢か現実かよくわからんくて。あとはそれから、森見登美彦四畳半神話大系」(ISBN:4872339061)も読了。これもまた文体が好みだし内容も面白かった。人生の中で何度もある選択という出来事も、結局何を選んでもどのみちあんまり変わりのないという情けなさ。想像はできても未来はなかなか眩しく照らすことは無いもんだ。そして文体は一種、ミニマル状態の気持ちよさすら感じる。他の作品も読んでみたいと思える作家。あとは群像7月号に載っていた生垣真太郎「キメラ」も今日ようやく読了。これも面白い。謎と連鎖と不平等と青さと錯綜、okay、孤独。小説というよりひとつのリリックを読んでるような感じ。これも他の作品も読んでみたいかな。これらすべて図書館で借りてきたものだが、同時に借りてきた藤井貞和の詩集もいい詩だなと思う。朗読して深みが増す言葉。
 深夜にテレビで「スワロウテイル」(ISBN:B00005HP4Y)がやってたので、かなり久しぶりに見た。岩井俊二の作品は大抵好きだけども、大体内容は暗くて残酷な話のものが多いのに美しく昇華させているし、見終えた後なんとなく泣き終わった後のような、わだかまりつつもスッとするような気持ちにさせるのはなんでだろう。そして、先ほど上映中のときからずっと見たかった「メゾン・ド・ヒミコ」(ISBN:B000DZJLRK)をとうとう見た!まあ、オダギリジョー好きなので。ここ最近映画を映像的に見てしまうのは自分でも悪い癖だと思っているけれども、それがなくとも色彩的にも綺麗な映画だった。オダギリジョーも男の色気があったけど、柴崎コウの役どころがまた良かった。話も切なかったり意外に所々ユーモアのある箇所もあったりと、久しぶりに心から好感の持てる映画を見た。