泥水に果てて

 その森の入り口には立入禁止の柵が張ってあった。バリケードを破ることもせずに、さてどうするべかなと、ただそこで佇んでいたら、途端に猛烈な切ないような寂しいような感情に駆られて徐々に辛くなって目が覚めた。こういう夢をついこの前転寝してしまった時に見た。まあ、その後寝ぼけたままインスタントコーヒーではなく間違ってコーヒー豆をそのままカップにざくざく入れてしまいお湯を注いで泥水のようなコーヒーが完成して一気に目が覚めたんだけども、あの感情だけ起きてからも嫌に鮮明でな。
 先日図書館に行った時に資料検索機をいじってたら画面に触れる時のピコピコ音がやけに小気味よく感じて、当然隣の検索機からもピコピコ鳴っているわけで、操作しているうちにだんだんその複数のピコピコ音がひとつの音のように思えてきて、それになんか凄い衝撃を受けた。なんというか、見知らぬ相手同士でも一緒にひとつの音を作り出すことが出来るんだなあって。それなんかいいなと。自分のやっている事でなんとか昇華していけば結構面白いかもしれない。
 ただ、そうやって日々を過ごしてく中で稀にこういう衝撃的な体験をしていても、まだまだ足りないと私は思う。結局、井の中の蛙大海を知らず(しかし私はこの言葉が大嫌い)じゃないかと、最近私自身に対してよく思う。この場所だけじゃなくて、もっとあらゆる場所の土を踏んで空気を吸って、たくさんの経験をするべきだ。もっとたくさんの刺激を受け自分自身を形成して、そしてこの場所に持って帰りたい。だから私は旅がしたい。そう思っている。
 台風来るのか?