忘れる

 朝日を浴びて奥歯が欠けた。昔から傘をさすのが大嫌いなので大変おっくうな季節である。あんまりささないでいたらちょうど去年の今頃に大雨に当たって39度の風邪をひいたのに懲りてそれ以来は渋々でもさしている。しかし、本来はどうでもよく思っているもの故かよく傘を置き忘れてしまうのだ。行き道で持っていたはずのビニール傘を帰り道には持っていないということはこれまで幾度と。酒が入っていれば尚更だ。思えば小学の時も雨の日に傘を持たされては持って帰らずに何本も放置し、終業式の度に4、5本近く傘を持って帰っていた覚えがあるのだから懲りない奴だとつくづく。いっそ素敵な傘でも買えば忘れることもないんじゃないかと思うが、雨が降れば安いビニール傘を買ってそれをその日に無くすという悪循環な行為を繰り返している分、踏み切るには至らない。そもそも私は傘が物心がつく頃から生理的に大嫌いなので「素敵な傘」自体にも興味が無かったりする。でも雨の日はわりと好きだ。
 近頃小中学の友人と久しぶりに偶然会うことがよくある。必然的に私の2ヶ月の短すぎる高校生活と当時にやらかした事などがフラッシュバックするので気まずさが残るのも否めないが。それよりも多くの友人が、嫁となり母となっているということに驚く。もうそうなってもおかしくない歳であるんだと改めて実感する反面、「母は強し」といわんばかりの友人のたくましさを見て*1、冴えない自分の姿に情けなさや途方に暮れてしまう。なにやってんだ自分は…。いまだに青さを知らず成人してしまった私はいつまでたっても情熱に傾倒する。それでいいじゃない。私は私のやり方で疾走して行くしかない。
 バイトが受かり、明日は初出勤である。
 追求してその先にあるものは「無」だと。信じたくは無かったがこの歳になりようやくわかってしまう。

*1:あくまで子持ちだ既婚だ云々じゃなくやはり守るものが出来ると人間強くなるのは本当だなと