バイタルサイン

 東北地方太平洋沖大地震で被災された全ての方々へ。心からお見舞いを申し上げるとともに、震災で亡くなられた方々、大切なひとを失った方々に謹んで哀悼の意を表します。
 わたしが住む旭川は北海道の内陸部にあたり、その街並みを囲む山々は、遠く離れた海のことを知ろうとする生物たちの目を少し塞ぐように、包まれ守られて生きてきました。故に、海のこわさも知らず、地震そのものも滅多にない。今回の本震発生時3月11日14時46分、こちらは震度2程度の日常生活を送る上で直接的な影響はない微々たる揺れでしたが、余震が長く続いていたこともあり、旭川がここまで揺れているということは他の地域はもっと大変なことが起きているんじゃないか、と心がざわついた。あらゆる画面越しに映る、被災地の現状と混乱。ただ、胸は痛むばかりで、動揺を隠すことが出来ない非常事態ではありながら、ここにいるとなんだか何かがほんの少しだけ、霞んで見えるようで、やっぱりここは海外なのだろうか、と思い煩った。その無力さが怖かった。それでも、これは同じ国内で起きていることで、これは決して他人事じゃないと、そう確かに思えた。東北、道内太平洋沖、関東。そこには、私の大切な友人がたくさんいる。震災から三週間が経ったいま、日にちを重ねるごとに少しずつ友人の安否が無事に確認出来ましたが、つい最近になってようやく確認が取れたひともいた。まだまだ大変な状況は続いているけれど、必ず。被災地の1日も早い復興を祈っています。
 三月のあいだ、私は三度ほど札幌へ行った。まず最初は3月5日、6日。ライブに行く予定なく札幌へ行ったのはとても久しぶりのこと。この日は、東京に住むゆきさんがご子息ゆったんと共に帰省するということで会いに行った。ゆったんと念願のハジメマシテ、ほわほわの愛に溢れた可愛い赤ちゃん。駅前のカフェで、ノロさんとnogさんと一緒にランチをして、またの再会を誓って、夜はnogさんの家へ泊まった。会えてなかった時を埋めるように、たくさん笑って、いろいろなお話をして、札幌がぐんと身近になれたような、うららかな1泊2日だった。カタルシス。ありがとう。
 そしてこちらでは事後報告となり恐縮ですが、3月13日はカウンターアクション、3月19日は161倉庫で、ディストロを出店させて頂きました。
 まずは13日のこと。震災から2日後、現在は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるように思いますが、その時は全国的にも不謹慎という大きな闇に包まれ、多くのライブ開催の自粛または延期を余儀なくされる、その渦中の真っ直中にあった。札幌へと向かう高速道路では、自家用車よりも被災地へ向かう自衛隊車が多く走っていた、それが私の目に見えた非日常だった。躊躇いは否めなかった。しかし、この日ディストロ出店のお誘いを頂いた企画者のヒロさんの決行する気持ちに感謝を示しつつ、ディストロに心を込めるために、私は札幌へ向かった。あの日の出演者勢は特に、胸中は様々に複雑だったんじゃないかと思います。リハ時やライブの転換中、皆さんと話してたときも、各バンドのライブのMCでも、必ず地震のことを言及していたし、互いが互いの友人や親族の安否を気遣っていた。カウンターへ着くと少しだけどよんとした空気はありながら、それぞれがそれぞれの在り方で、日常の糸を切らさぬよう、いつもと同じように集ってた。私は札幌で多くの友人に会えて、家でひとりでいるよりも誰かに会うことで、少し不安が和らいで、会える時に限りがあるなら会える時をいっそう大切にしようと強く思った。
 この日はフロアライブで、物販とディストロはステージの上といういつもと少し変わった展開。カウンターアクションのフロアライブを観るのは個人的には初めてであれば、ステージ上でディストロを出店するのも初の試みでした。皆さんがステージにのぼって覗いて下さるか心配でしたが、想像以上の反響があったし、少し高いところにいながらも人と人のやり取りはフラットで、とてもあたたかかった。あの日関わった皆さん本当にありがとうございました。この日からカウンターアクションでは被災地への募金箱が設置され、私もこの日のディストロの売り上げ一部をカウンターアクションの募金箱へ預けました。
 ライブは全4バンド、最初はキジ。フロアが映える良いライブだった、なお君の動きがキレキレでかっこよかったな。しあわせならてをたたこうは、結成当初にライブを観たことがある為とても久々ですが現体制では初めて観れた。ずっとライブ観たいと思ってたので嬉しかった。ボアドトゥデス、改めて藤山さんがピンボーカルで叫ぶ姿は最高にかっこよくて、気持ちが奮い立った。トリがカスバーツ、ライブ自体とても久しぶりだったみたいで観れて良かった。よく北海道の音楽は空気がピンと張り詰めた冬が似合う音などと形容されることは結構見かけるけれど、カスバーツは春夏秋冬どれも似合うなあと思ってる。私はカスバーツの音楽を聴くと、真夏に行った当麻の祖父母の家のベランダで眺めた風景を何故か思い出す。そして気持ちが少し下を向くとき、私はいつもカスバーツの音楽を聴いている。まるで、一筋の光であるように、心に寄り添っていく音楽。私だけじゃなく誰かにとっても、光であるといいなあ。素晴らしいライブで泣きそうになった。全てのライブが終わり、皆さんと談笑したあと、旭川へ帰った。ありがとうございました。
 そして19日のこと。この日は161倉庫でキジとウォークと3rd happy hardgoreの3バンド合同企画。TGと一緒に札幌へ向かった。正午過ぎ、大西さんと谷さんが迎えにきて合流。同行するブランコリアのちょるを迎えに行き、前日旭川モスキートで募ったカウンターアクションへ託す被災地への支援物資と機材を乗せて、旭川を発つ。旭川の皆が持ち寄ったたくさんの支援物資。私も女性用品を一緒に持ち寄りました。どうかひとりでも少しでも、支えとなりますように。届きますように。行きの車内は大半が三浦さんのネタで異様に盛り上がり、終始笑いっぱなしだった。札幌へ着き、まずはカウンターアクションへ物資を無事に託したあと、161倉庫へ。先に到着していた三浦さんとモトイさんと合流。札幌の皆と再会。リハを見たり、ディストロの準備をしたり、161の控え室にある飲食スペースでご飯を食べたり、皆と談笑しながら開場。この日はナナナ!の皆さんを中心に中古TシャツとCDを持ち寄り、その売り上げを全額募金にあてるチャリティーも行われてました。売り上げも上々だったようで、後日今村さんがカウンターアクションを経由して送金したとのことです。
 ライブはこの日もキジではじまり。13日のライブも良かったけれど、この日のライブは本当に感極まるものがあった。涙が出そうになったほど。キジは観る度にかっこよくなっていくし、まだまだ伸びしろがあると思うので、今後とも期待して見届けていきたいなと思う。そしてナナナ!はまさに揺るぎのないかっこよさ、心が揺さぶられる。3rd happy hardgoreは前々から名前を聞くこともあったけど、今回はじめて観れた、楽しみにしていた以上にドツボにハマった。旭川でもライブが観たいです。ゴムナパースはゴエさんが背中を向けるようにフロントにドラムを置くセッティング。最高に脳内麻薬分泌してクラクラした。そして、新体制では初のライブとなったTG、期待以上の衝撃。渋さが増して、よりアグレッシブになった印象。私はいまのTGを全面的に支持。谷さんがシンセを弾いた瞬間、私の前で観てたジンチ君が超満面の笑みでこちらを振り返ったのが自分の知る限りでは最高の反応だったかも…。フォルテッシモから丸半年ぶりの復活、皆とTG復活の瞬間を観られて、反応もリアルに体感出来たのは何よりも嬉しかったし、観れて良かった。5way split「BreakingConcept」も絶品です。そしてトリがウォーク、4人が持つ個性をとても良い塩梅でひとつにまとまってた気がした。ます君のドラムが改めて良いなと思った。ライブが終わり、打ち上げが始まる前に皆さんにご挨拶して、ご飯を食べて旭川に帰りました。楽しく、本当に意義のある時間だった。札幌の皆さん本当にどうもありがとうございました。また近いうちに会いましょう。また、旭川でも待っているね。
 そして3月21日。私はまたひとつ歳を重ねました。
 28歳になりました。メールやツイッター上のリプライ、ミクシなどお祝いしてくれた皆様改めてありがとうございます。
 今後とも、よろしくおねがいします。
 歳をとることって決して悪いことじゃない。歳月を重ねるのは最近楽しい。そしていま、国内がこういう状況だからこそ、誕生日を迎えられたことに感謝しています。新しい歳をむかえて、今日から先はどういう未来になるのか、と部屋の天井を眺めていた。漠然としてるけど、いまはこのまま少しだけ、ゆっくり時が流れるままに身を委ねてみよう、と思う。1年後の今日の自分が、いまの自分じゃあ想像つかないような出来事の連続で、輝く未来が築き上げられてることを願って。
 共に、生きてこう。生きてゆきましょう。